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2型糖尿病患者の急速な腎障害について

2型糖尿病患者の急速な腎障害について

こんにちは。

桜もほぼ散ってしまいましたね。春が過ぎて暖かい日が多くなってきました。

季節の変わり目は体調を崩しやすいので、気をつけてくださいね。

さて、今日のブログは少し難しい内容です。

糖尿病を患っている方が急速に腎臓の機能が低下する病態があります。この急速に低下する原因(生活習慣)についての研究発表がありましたので、お伝えしていきたいと思います。

良かったら最後までお読みください。

糖尿病と腎障害

糖尿病による血糖コントロールが不十分で高血糖状態が長期間続くと、糸球体が障害を受けてたんぱく尿が出るようになり、腎臓のろ過機能が低下します。この状態を「糖尿病性腎症」といいます。

糖尿病の治療をしないまま高血糖状態が続くと、腎機能は悪化し続けます。最終的には、尿を作る能力が失われた、腎不全の状態になります。最近の報告では、糖尿病性腎症が進行し、透析が必要となる患者さんの数が急増しています。

糖尿病を患っているとジワジワ腎臓にもダメージが蓄積されますが、まれに急激に腎障害が進む場合があります。今回の研究ではどういった生活習慣が急な腎障害を引き起こすのか検討しています。

研究内容

大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻総合ヘルスプロモーション科学講座の李婭婭氏、樺山舞氏らの研究によるもので、論文が「PLOS ONE」に掲載されました。

60万人近い日本人を2年にわたり追跡した研究で、2型糖尿病者で時にみられる腎機能の急速な低下に関連のある生活習慣因子が特定されました。喫煙、朝食欠食、運動不足、睡眠不足などが独立して関与していることが示されています。特に60歳以上では朝食欠食が、ベースラインの腎機能にかかわらず、独立した関連因子だという事です。

推算糸球体濾過量(eGFR)とは

eGFR(推算糸球体濾過量)とは、腎臓の機能が今どれくらいあるかを示す値です。一般的な検査で使用される指標で、「血清クレアチニン値(血清Cr値)」「性別」「年齢」から推算された糸球体濾過量のことを指します。

数字は大きいほど良く、低くなると腎機能の低下を表しています。

eGFR(ml/分/1.73m2) 腎臓の働き具合
90以上 正常
60以上90未満 正常な腎臓の2/3くらい
30以上60未満 正常な腎臓の1/3~2/3くらい
15以上30未満 正常な腎臓の1/6~1/3くらい
15未満 正常な腎臓の1/6未満

研究対象者

解析の対象者は、2018年度と2020年度双方の特定健診の記録がある40~74歳の成人のうち、2018年度(ベースライン)時点で2型糖尿病に該当した人から、2018年度以前から透析が行われていた者、および1型糖尿病と考えられる医療費請求の記録のある者、2018年度の腎機能正常者(eGFR85mL/分/1.73m2以上)、データ欠損者を除外した57万3,860人を対象としました。

主な特徴は、性別は男性が77.30%、年齢は40~59歳が48.63%、60~74歳51.37%で、HbA1cは7%未満が65.53%、7%以上34.47%だった。また、特定健診の問診票から、睡眠で休養が十分とれていない(以下、「睡眠不足」とする)割合が35.56%で、現喫煙者27.32%、朝食欠食者14.81%、運動不足71.65%、遅い時間帯の夕食摂取31.90%、多量飲酒17.23%と判定されました。

該当者

2018年度から2020年度にかけて、eGFRが30%以上低下した人が、7,683人(1.34%)が該当した。

腎機能に影響を及ぼし得る因子(性別、BMI、HbA1c、収縮期血圧、LDL-C、貧血、血糖降下薬・降圧薬など)を調整後に、ロジスティック回帰モデルにて、年齢層およびベースラインのeGFRカテゴリー別に独立した生活習慣関連因子を検討した結果、以下の結果が得られました。数値はオッズ比とその95%信頼区間です。

年齢が40~59歳

この年齢層で、ベースラインeGFRが60~85mL/分/1.73m2と腎機能が軽度低下していた群では、現喫煙1.29(1.12~1.50)と、朝食欠食1.57(1.34~1.84)がrapid declineに対する有意な正の関連因子でした。

ベースラインeGFRが30~59mL/分/1.73m2の腎機能が中等度低下していた群では、睡眠不足1.19(1.00~1.42)と現喫煙1.45(1.21~1.73)が有意な正の関連因子であり、多量飲酒0.75(0.59~0.95)は有意な負の関連因子でした。

ベースラインeGFRが30mL/分/1.73m2未満の腎機能低下が高度な群では、睡眠不足1.36(1.00~1.85)のみが有意な正の関連因子でした。

年齢が60歳以上

この年齢層で、ベースラインeGFRが60~85mL/分/1.73m2の群では、現喫煙1.40(1.20~1.63)と、朝食欠食1.32(1.07~1.63)、および運動不足1.21(1.06~1.39)が有意な正の関連因子でした。

ベースラインeGFRが30~59mL/分/1.73m2の群では、現喫煙1.84(1.55~2.17)と、朝食欠食1.35(1.06~1.70)、運動不足1.48(1.26~1.74)、および遅い時間の夕食1.22(1.03~1.45)が有意な正の関連因子でした。

ベースラインeGFRが30mL/分/1.73m2の群では、朝食欠食1.88(1.15~3.09)のみが有意な正の関連因子でした。

結果まとめ

●現喫煙と腎機能低下

腎機能がある程度保たれている状態ではどの年齢でも、オッズ比が高く、現喫煙は間違いなく腎機能に悪影響を及ぼしています。腎機能低下が高度な群では有意差はみられませんでした。

●朝食欠食と腎機能低下

朝食欠食については、欠食後の血糖変動への影響が1日の前半だけでなく終日続く可能性があり、脱水や低栄養を介した腎機能への影響を示唆する研究もあると言われています。また本研究の60歳以上の集団において、ベースラインのeGFRにかかわらず朝食欠食は独立した関連因子であり、かつeGFRが30mL/分/1.73m2未満と高度に低下している群では朝食欠食のみが有意であってオッズ比も1.88と高いことから、腎機能低下がより進行した状態ではより強く影響が現れるのではないかとされました。

●遅い時間帯の夕食と腎機能低下

遅い時間帯の夕食摂取については、そのような食事パターンによってアテローム性動脈硬化が加速すると指摘されています。また、遅い時間帯に夕食を食べる人は、ヘルスリテラシーが低い傾向があり、全般的に非健康的なライフスタイルだとする研究もあると言われています。

参考HP:スポーツ栄養WEB NEWS

 

今回は糖尿病患者を対象にしている研究を解説しました。いかがでしたでしょうか?

喫煙が腎機能悪化に影響があるのは何となくわかりますが、朝食抜きが腎機能悪化に影響があるのは意外でした。

まだまだ、知らない事が多いですね。勉強を重ねて行かないといけません。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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