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こんにちは。
10月も中旬を過ぎ一気に秋らしくなってきましたね。近年は、秋が短く感じます。様々なものが美味しく感じられる食欲の秋を楽しみたいと思います。
今回は、腹部超音波検査で発見されることが多い『膵嚢胞』についてです。ぜひ見てみてください。
膵嚢胞(すいのうほう)とは
嚢胞とは液体の入った風船のような袋のことであり、膵臓の中もしくはその周囲にできた嚢胞を膵嚢胞と呼びます。多くの場合、無症状であり、画像診断の進歩により健診などで偶然発見されるケースが増えてきました。大きさは数ミリ程度の小さなものから10cmを超えるものまでさまざまであり、1個だけの場合もあれば複数個認める場合もあります。
主な膵嚢胞性疾患
非腫瘍性嚢胞
炎症後に伴う嚢胞(急性膵炎、慢性膵炎など)
膵液瘻後嚢胞(外傷後、術後など)
腫瘍性嚢胞
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
膵管上皮から発生する腫瘍で存在する場所によって主膵管型、分岐膵管型、混合型に分類されます。
ほとんどが無症状ですが、膵管内の膵液の流れが悪くなると膵炎を引き起こし、みぞおちから背中へ痛みが起きることがあります。
IPMNは良性から悪性までさまざまな段階があり、長い年月をかけてゆっくりと進行していきます。IPMNで注意する点は、「嚢胞自体ががん化することがある」点と「嚢胞以外の膵内に膵がんが発生することがある」点です。IPMNのがん化は年1%ほどといわれており、慎重な経過観察が必要で、通常型膵がんの発生を早期に発見することが大切です。
画像検査(造影CTやMRCP)、内視鏡検査(EUSやERCP)を組み合わせて経過をみていきます。
検査によって悪性所見が得られた場合、また悪性を強く疑う場合は手術治療が検討されます。
粘液性嚢胞腫瘍(MCN)
中年の女性に多く、粘液が貯留した嚢胞を形成し、悪性の可能性が高いため手術治療が勧められます。
漿液性嚢胞腫瘍(SCN)
中年の女性に多く、MCNとは異なり良性の可能性が高いですが、大きさが増大するケースなどは手術治療を行う場合があります。
膵神経内分泌腫瘍(PNET)
PNETとはインスリノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍などを含めた神経内分泌腫瘍の総称です。 ホルモン症状があるものを機能性、ないものを非機能性と呼びます。進行は比較的穏やかですが、急激に進行するものもあり、注意が必要です。
充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)
若年女性に好発する低悪性度腫瘍で多くは無症状です。男性では稀ですが悪性度が高いことが多いです。
検査の種類
腹部超音波検査
超音波を体に当てて行う検査で身体への負担が少ない検査です。健診などでも行われます。膵臓のおおまかな評価を行います。
腹部造影CT検査
造影剤を血管内に流し、嚢胞を含む膵臓全体を評価できる精度の高い画像検査です。
ヨード系造影剤を使用するためヨードアレルギーの方は検査を受けることができません。
MRCP
MRI検査で嚢胞と膵管の関係を詳細に評価することができます。
磁器を用いるためペースメーカーなど体内に金属が入っている方は検査を受けることができません。
ERCP
内視鏡を十二指腸の奥まで進め、膵管に管を通して造影剤を流すことで膵管と嚢胞の交通を直接評価することができます。膵液を採取することで細胞の良悪性を評価することができます。
超音波内視鏡(EUS)
先端に超音波装置を有した胃カメラを用いて、胃や十二指腸の中から超音波検査を行って膵臓の評価を行います。通常の超音波検査と異なり、骨・脂肪や消化管内の空気の影響を受けないため、詳細な評価が可能です。また、嚢胞内の組織や含まれている体液を採取し良悪性を評価することができます。
治療
膵嚢胞の種類によって異なります。
膵炎や外傷による嚢胞の場合は、経過中に出血や感染症を起こすことがあります。そのため点滴や絶食
抗生物質などによる内科的治療や、場合によっては手術が行われます。
がんの可能性が疑われる場合には、摘出手術が行われます。
いかがでしたか?
IPMNを代表とする膵嚢胞性疾患は慎重な経過観察が重要です。継続的な診察によって、早期の適切な治療につながります。当クリニックの腹部超音波検査により膵嚢胞を確認した場合は、定期的な超音波検査を行っています。また、必要時は専門施設への紹介をさせていただいております。
本日お伝えした膵嚢胞性疾患の膵腫瘍についてはある一定の頻度で遺伝することもあります。近親者で膵嚢胞性疾患を発症されたことのある家系の方は一度検査を受けられることをお勧めします。
ご心配な場合はご相談ください。最後までお読みいただきありがとうございました。