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こんにちは。ひらたクリニック副院長の井口です。
2週間前くらいから発熱や風邪症状のある患者様が多く来院されています。
先週は特に多く、インフルエンザに罹患されている方が多かったです。
インフルエンザがかなり流行していますので、皆さんもご注意頂けたらと思います。
当院では発熱や風邪症状のある方の診察は予約が必要です。お電話にてのご予約となりますので、ご理解とご協力をお願いいたします。
さて本日のブログはアニサキス症についてです。
良かったら最後までお読みください。
アニサキスというのは寄生虫の一種で、ヒトが摂取すると腹痛を引き起こします。
アニサキスは、サバやアジ、イワシなどの魚に食べられる事でその体内に住みつきます。
その後、サバなどの魚が海生哺乳類(クジラ、イルカなど)に食べられると、その胃の中で成虫に成長して、タマゴを産みます。(逆に言うと海生哺乳類に寄生しないと、成虫になれないため、タマゴも産めません)。
「アニサキスのタマゴは海生哺乳類の糞とともに海中に散布され、それが幼虫となってサバに感染し、それがクジラに食べられて、成虫となり、タマゴを産んでクジラの糞とともに海中へ」という事を繰り返して世代交代を繰り返しています。
アニサキス症というのは、このクジラやイルカなどに食べられるハズの、アニサキスに寄生されたサバやアジを、ヒトが食べたときに起こる症状です。
本来はクジラの胃の中で成虫になるはずのアニサキスがヒトの体内に入ると胃や小腸にかみつきます。すると、かみつかれた所でアレルギー反応を起こし、様々な症状を引きおこします。
症状は上腹部痛が一般的で、嘔気、嘔吐、下痢などの報告もあります。
治療は胃カメラによるアニサキスの除去となります。
胃カメラで胃にかみついたアニサキスをつまんで除去するのですが、この際に虫体がちぎれるとかみついた頭が粘膜内に残ってしまい、アレルギー症状は治まりません。
ですので、体ではなく、頭をしっかりつかんで除去するのがコツ・・・って、コレは後輩に説明する内容ですね。
腹痛は、食後数時間で出現し、アニサキスの摂取は食事とともに行われるため、胃カメラのタイミングを間違うと大変です。胃内に大量の食事が残っており、アニサキスを探すのに苦労します。しかも、1匹見つけたからといって、他にいないとは限らない、と言うか、複数匹いる事が多いので注意・・・ってコレも後輩に説明する内容でしたね。
この様な疾患なのですが、実は最近増えてきています。というのも、商業捕鯨が世界的に禁止になっているからです。
「商業捕鯨が禁止になるとアニサキス症が増える」という、「風が吹けば、桶屋が儲かる」的な理論、わかりますか?
過去に鯨油目的に世界の国々がクジラを乱獲していたため、クジラの頭数が減少し、絶滅の危機に瀕した種もいたようです。
クジラの絶滅回避、将来的な海洋資源保全目的に、国際捕鯨委員会が設立され、その加盟国は、クジラの頭数が回復するまでの間、商業捕鯨を禁止するようになりました。
この運動によりクジラの頭数は徐々に回復し、種類によっては増えすぎているのではないかと言われるぐらいになってきました。
クジラの頭数が増えると、アニサキスに寄生された魚がクジラに食べられる可能性が増え、クジラの中で成虫になるアニサキスの数もどんどん増えます。
成虫のアニサキスが増えれば、産むタマゴも増えていきます。
そうすると、タマゴからかえった幼虫を食べるサバやイワシが増え、それらが食卓にのる確率も上がってくる訳です。
予防方法
アニサキスの感染予防には、①原因食品の多いサバやサンマなどの生食を避ける、②冷凍処理(-20度で24時間以上)、③加熱処理 (60℃で1分以上)、④新鮮なうちに内臓を取ってしまう(もともと内臓にいるが宿主が死ぬと筋肉に移動するため)などがあります。
他に面白い試みとして、アニサキスを1億ワットで感電死させるという熊本大学での研究があります。
ちなみに、酢漬け、塩漬け、わさびや醤油では死滅しないため、注意が必要です。
冷凍していれば死滅しているので、チェーン店の回転寿司を食べている私には関係ありませんが、市場で鮮魚を買ってきて食べている家庭や、釣りのついでに船上料理を楽しまれている方、あるいは、高級寿司店や料亭で新鮮な刺身を食べている方などは、ご注意を。
最後までお読み頂きありがとうございました。