ミイラの話|医療法人 好友会 ひらたクリニック|羽曳野市、古市駅の消化器内科・内視鏡内科・内科

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ミイラの話

ミイラの話|医療法人 好友会 ひらたクリニック|羽曳野市、古市駅の消化器内科・内視鏡内科・内科

2026年4月27日

こんにちは。
大阪府羽曳野市にある、医療法人好友会ひらたクリニック、副院長の井口です。

気候が良くなり、暖かい日が続いています。
GWも近づいてきて、気分も上昇してきますね。

本日はミイラの話をしたいと思います。
良かったら最後までお読みください。

ミイラの話

皆さんは「ミイラ」と聞いて何を思い浮かべますか?
多くの方はエジプトのミイラを思い浮かべると思われます。私もそうです。
では他は?といわれるとなかなか出てこないものです。他と聞かれて、私が思い出すのは今回の話です。

敗血症の患者様

その方は高熱と倦怠感で来院され、敗血症という診断の元、私が担当する事になりました。

敗血症とは、病原菌が感染部位で増え過ぎた挙句、血流にのって全身にいきわたる病態です。多臓器障害を引き起こすため、早急に対応しなくては生命の危機に瀕する事があります。
通常の感染症は、感染巣を特定して、原因になりやすい細菌を推定してから、その菌に特に有効な抗生剤を選択し治療します。

しかし、敗血症の場合はとにかく、細菌の数を減らし、多臓器障害を引き起こさないようにしなければいけないため、様々な細菌に効く(医学用語で広域に効く)抗生剤を選択します。

そう聞けば、「普段から広域の抗生剤を使えばいいのに」と思うかもしれませんが、あまり使いすぎると、耐性菌という、使用した抗生剤が効きにくい細菌に変化してしまいます。ですので、そういう薬は「奥の手」として取っておく必要があり、普段から、やたらめったら、使用する訳にもいかないです。

治療開始

今回は、敗血症という事もあり、多くの細菌に有効な抗生剤の使用を開始しました。同時に感染した血液を採取し、原因菌の特定と、その菌に有効な抗生剤を調べる「血液培養」という検査を行いました。
抗生剤はどんなものでも効果が現れるまで2、3日かかります。増殖する細菌の勢いが鈍化し、減少に移るのに1、2日かかるからです。

また、血液培養も細菌が増えるのを待つ必要があるため1-2週間かかります。

今回は広域の抗生剤を使用したかいもあり、3日目から解熱し、血液検査の炎症反応も著明に低下し、7日目にはもう少しで正常値化という所まで改善しました。このまま、今の抗生剤で押し切れると半ば勝ちを確信した時、それは起こりました。

抗生剤を使用しているにもかかわらず、微熱の出現するようになったのです。血液検査でも、炎症反応が再上昇しはじめ、高熱が出現するようになりました。

その頃、結果が出た血液培養では、現在使用している抗生剤は有効との事でしたが、その結果は来院当時のものであり、おそらく使用している間に細菌に耐性ができたと考えてよさそうでした。培養で分かった他の有効な抗生剤に変更し、しばらく様子を見ることにしました。

病原巣発見

最初の抗生剤使用中に病原巣を探していたのですが、病原巣は意外な場所でした。もともと、患者さんが「水虫」で、皮膚科に通院していたのは知っていたのですが、入院当初は他の臓器感染を疑い、全く相手にしていませんでした。

しかし、血液検査で、重度の糖尿病の疑いがある事がわかると、「水虫」が病原巣の第一容疑者に躍り上がってきました。

足を確認すると右足の小指が紫色に変色し、ジュクジュクしていました。

糖尿病が進行すると血流障害が起こるため、免疫細胞や治癒する細胞が血管を移動しにくいため、傷口が膿みやすい病気です。水虫でできた傷に細菌感染する事で容易に感染巣が形成されます。

綿棒でジュクジュクした皮膚から細菌を採取し培養にかけると、血液から特定した細菌と一致し、病原巣である事がわかりました。

一番いいのは抗生剤の点滴により、病原巣ごと細菌を根絶する事ですが、最初の抗生剤でそれが無理な事がわかりました。病巣は変色しており、とても血流が豊富とはいえず、少量ずつ患部に届くであろう抗生剤は、他のものに変えたとしても、有効濃度には達せず、細菌に耐性を付けてしまうことは火を見るより明らかでした。

感染巣の切除

皮膚科の先生に、感染巣の皮膚を切除していただきましたが、血流が悪いため、切除面もすぐにグジュグジュになってしまいました。
使える抗生剤は後あまり残っておらず、今使用している抗生剤もいつまで、持つかわからない状態のため、上司に相談したところ、感染巣の切除を勧められました。

整形外科にお願いすると、足首あたりは十分な血流がなく、縫合してもくっつかないため、切除するなら膝からの切断になるとの事でした。
術前に膝までの血流を確認したところ、膝までの血流も十分でない事がわかり、足の切断も難しくなりました。その結果を受けての整形外科の先生の判断は、足を腐らせて、病巣が落ちるのを待つというものでした。

その後、私は主治医を外れたのですが、後に病棟でばったりあった患者さんに足先を見せてもらいました。そこにはカサカサとなり、小枝のようになった真っ黒な指が3本。

患者さん曰く、「整形の先生が足をミイラ化させた言うてました」と。

「水虫」や「糖尿病」はよく聞く病名ですが、ちゃんと治さないと怖い事になりますよ。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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