吐き気とは

吐き気とは、胃の内容物を吐き出したくなるような不快な感覚を指し、医学的には「悪心（おしん）」とも呼ばれます。吐いてしまう前の前兆的な状態であり、単なる胃の不調にとどまらず、さまざまな体の異常や疾患のサインとして現れることがあります。

一時的なものから慢性的に続くものまで原因はさまざまですが、「いつものことだから」と軽く見ず、症状が繰り返す、長引く場合は、消化器内科での検査・診察が大切です。

吐き気の主な原因

胃や腸の不調

最も多い原因の一つが、胃腸のトラブルです。暴飲暴食や脂っこい食事、冷たいものの摂りすぎによって胃の働きが一時的に低下し、胃の中に食べ物が長く留まることで吐き気が生じます。

胃酸の逆流（逆流性食道炎）

胃酸が食道に逆流することで、胸焼けや喉の違和感とともに吐き気を感じることがあります。特に、空腹時や寝る前、食後に悪化する傾向があります。

感染性胃腸炎

ウイルスや細菌による感染性胃腸炎では、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状が現れます。ノロウイルスやロタウイルスなどは冬場に多く、強い吐き気を伴うことがあります。

薬の副作用

抗生物質や鎮痛剤、鉄剤などの薬剤の影響で吐き気を感じる方も少なくありません。薬を飲んだ後に気分が悪くなる場合は、自己判断で中断せず、医師に相談しましょう。

ストレスや自律神経の乱れ

強いストレスや緊張状態が続くと、自律神経のバランスが崩れて胃腸の動きが悪くなり、吐き気を感じやすくなります。特に朝や外出前に吐き気を訴えるケースでは、心因性の可能性も考えられます。

吐き気で考えられる主な疾患

急性胃炎・慢性胃炎

ストレスや食生活の乱れ、ピロリ菌感染などによって胃粘膜が炎症を起こし、吐き気・胃もたれ・みぞおちの痛みなどが出現します。慢性的に続く場合は、萎縮性胃炎などに移行することもあります。

逆流性食道炎

胃酸が逆流することにより、吐き気や胸やけ、酸っぱいものが上がってくるような不快感を覚える病気です。食後や就寝中に症状が強くなるのが特徴です。

機能性ディスペプシア（FD）

胃や腸に器質的な異常がないにもかかわらず、慢性的な吐き気や胃もたれ、食後の不快感が続く疾患です。ストレスや生活習慣、自律神経の乱れが関与していると考えられています。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃酸によって粘膜が深く傷つくことで、吐き気・嘔吐・空腹時の痛みなどが現れます。悪化すると出血を伴い、黒色便や貧血の症状も出ることがあります。

胃がん

初期には症状が出にくいものの、進行すると吐き気や体重減少、食欲低下、胃の不快感などが現れます。家族歴がある方やピロリ菌陽性の方は注意が必要です。

急性虫垂炎（盲腸）

右下腹部の痛みに加えて、吐き気や嘔吐、発熱を伴う場合は虫垂炎の可能性も。進行すると腹膜炎を起こすリスクがあり、緊急手術が必要なケースもあります。

検査方法について

問診・身体診察

いつから、どんなタイミングで吐き気が出るか、どんな食べ物や状況で悪化するか、他の症状（腹痛、発熱、下痢など）がないかを詳細にうかがいます。

血液検査

感染症や炎症、貧血、肝機能・腎機能の異常、脱水の有無などを確認します。

腹部超音波検査（エコー）

肝臓・胆のう・膵臓など、腹部臓器の状態を確認するために行われます。胆石や腫瘍などの発見にも役立ちます。

胃カメラ（上部消化管内視鏡）

胃や食道、十二指腸の粘膜を直接観察でき、逆流性食道炎・胃炎・潰瘍・がんの有無を調べることができます。必要に応じて組織を採取し、検査することもあります。

便潜血検査・ピロリ菌検査

胃がんや消化性潰瘍のリスクを評価するために行うことがあります。