2025年10月27日

こんにちは。
ひらたクリニック副院長の井口です。
本日は便潜血の話をさせていただきます。
良かったら最後までお読みください。
便潜血の話
便に血が混じる病気には大腸癌の他に、痔核、大腸ポリープ、動静脈奇形、虚血性腸炎、感染性腸炎、薬剤性腸炎、潰瘍性大腸炎、憩室出血などなど多岐に渡ります。
そんな便に血が混じる状態は、大きく分けて二つに分類されます。
一つは顕血便や血便と呼ばれるもので、血が混じっている事が一目でわかる便です。
明らかに便が赤いため、最初は様子を見ていても、数回繰り返したり、量が多かったりするため、医療機関を受診される方が多いです。
もう一つは、便潜血といい、微量の血液が混じっている便で、見ても血が出ていることはわからず、検査で見つかります。今回はこちらについて話をさせていただきます。
便潜血は健康診断で大腸がん健診の一環として、よく用いられます。健診で便潜血を認めれば、精密検査として大腸カメラをする必要があります。
こちらは、実際に血が付いた便を見ていない人が多いため、大腸カメラをしなくてはいけない事は理解しているものの、大腸カメラの悪名は知れ渡っているため、「もう一度、便の検査をしてもらえませんか?」とか、「下剤を2リットル飲むのですよね?1リットルにまかりませんか?」とか、「もともと、痔があるので受けなくてもいいですか?」とか、なかなか受けたがらない人もチラホラいます。
かと思えば、ネットで一通り、どんな病気の可能性があるかを調べて、一大決心をして、力強く、大腸カメラを予約して行かれる方もいます。
受容の5段階
「これは何かに似ているなぁ」と思っていましたが、心理学や緩和ケアで習ったキューブラー・ロスが提唱した「受容の5段階」に似ていることに気がつきました。
「受容の5段階」とは「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」の5段階で、本来は嫌な事を受け入れるまでのヒトの心のプロセスを表します。
医学生はこのプロセスを勉強する事で、末期癌などの患者さんの心の段階を理解し、心安らかに死を迎られるようにサポートできる様になります。
具体的には
1,否認
現実を受け入れる事ができず、一時的に現実を無視する状態です。
「そんなはずはない」などの現実を認めようとしない反応が見られます。
2,怒り
現実を受け入れ、怒りを覚える段階です。
「なんで、誰々ではなく、私なんだ」などの自分ではなく、周囲の人々や物事にたいして怒りを向ける事があります。
3.取引
少しでもマシな条件を引き出せないか取引をする段階です。
「赤点をレポートで回避できませんか?」「もう少しやすくなりませんか?」など
4,抑うつ
現実を受け入れ、舌房や悲しみ、無力感を抱える状態です。
「もう、何もしたくない」など、感情的な停滞が見られることがあります。
5,受容
現実を認め、受け入れる段階です。心の平穏が訪れます。
私もコレを習った時に、試験前に掃除がしたくなったり(1.否認)、試験勉強がはかどらない事を他人のせいにしたり(2.怒り)、これだけ机に向かったんだから評価ぐらいしろよ(3.取引)、あー、もう試験受けたくない(4.抑うつ)、試験始まったよ。もうやるしかない(5.受容)など、めちゃくちゃ心当たりがありすぎてビックリしました。
ひるがえって冒頭の「もう一度便の検査をしてもらえませんか?」、「下剤を2リットル飲むのですよね?1リットルにまかりませんか?」、「もともと、痔があるので受けなくてもいいですか?」などは3の「取引」の心理状態ですよね?逆に、覚悟を決めて大腸カメラを予約して行かれる方達は5の「受容」の心理状態であると思います。
そんな誰もが嫌がる大腸カメラですが、大腸癌を予防するには唯一の検査と言っても過言ではありません。
と言うのも、対抗馬が、便潜血検査(大腸癌の8割で陽性になるが、大腸癌は便潜血陽性の数%しかいない⇒対象以外をたくさん引っかける)や、CT検査(進行した癌は分るが、初期から中期の癌は見つからない事が多い)となってしまい、健診項目としての「早い」「安い」「簡単」には当てはまりますが、診断率や精密検査率でも大腸カメラに圧倒的に劣ります。
健診に関しては過去に「けんしんの話」で話しています。
歳を重ねれば重ねるほど、癌はできやすくなります。
私は50歳以上の方で、大腸カメラの経験のない人には「一度、大腸カメラを受けた方が良いですよ」と勧めていました。
しかし、最近、40歳代での大腸癌を頻回に診察しており、40歳代での大腸癌はその後の人生が大きく変わってしまうことから、現在は大腸カメラを勧める年齢を40歳代へ引き下げて、お勧めするようにしています。
最後までお読みいただきありがとうございました。